鍼灸古典『黄帝内経素問』霊蘭秘典論篇

今回は『黄帝内経素問』の「霊蘭秘典論篇」の一節。

この篇はとても読みやすくまとまっています。あまりにもまとまっているため考察の余地が少なく物足りなさを感じます(笑)

現代では少し修正されていますが、学校でもほとんどこのままの内容が授業で扱われます。私としては見慣れてしまっていますが、黄帝内経が編纂された当時の人たちにとってはどうだったんでしょうね。

者、君主之官也。神明出焉。

者、相傳之官、治節出焉。

者、将軍之官、謀慮出焉。

者、中正之官、決断出焉。

膻中者、臣使之官、喜楽出焉。

脾胃者、倉廩之官、五味出焉。

大腸者、伝道之官、変化出焉。

小腸者、受盛之官、化物出焉。

者、作強之官、伎巧出焉。

三焦者、決瀆之官、水道出焉。

膀胱者、州都之官、津液蔵焉。

黄帝内経素問.霊蘭秘典論篇.

○○の官」という官職名のような表現は現代中医学でも使われています。その他も概ね変わりありません。

ただし、現代は黄帝内経の表現とは少し変わっています。黄帝内経あるあるです。

黄帝内経で「膻中」とされている部分が「心包」となっています。心包は君主である心を守っているとされ、また心の働きの執行役と言われたりもしますし、その繋がりの中で消化器系とも関連しています。

君主の官

霊蘭秘典論篇には、トップは「(君主)」で神明の出ずるところだと書かれています。

現在言われている五臓六腑(六臓/六腑)

肝・心・心包・脾・肺・腎
胆・小腸・三焦・胃・大腸・膀胱

たしかに循環系としてのトップは「心臓」かもしれません。生命ということで言えば「心」が最重要になるのは当然です。心配蘇生でも呼吸より循環が優先されますからね。

ただ、君主一人では国にはならないのもまた事実。人が揃ってこその国です。

心は強くするよりも守るものです。トータルで強さを出すことはできても、心そのものが強くなるわけではないと思っています。*心と精神は異なります。

だから守り手として膻中(心包)があるわけです。そして、守るのは心包だけではありません。その他の臓腑も同じです。心を守るための臣下が揃えられています。

中医学で言う心には精神活動の要素も含まれますが、精神活動全てを心が担っているわけではありません。そこには臓腑トータルで関わっており、それぞれが心を守っています。

私は鍼灸治療もこの考えがそのまま当てはまると思っています。その場その時の症状への施術はまた別の話ですが、超長期で人の身体や鍼灸治療を考えていくと、トップである心を守っていくための鍼灸が重要であると考えています。

だいたい川崎たまに鳥取。