鍼灸治療の仕組み(教科書的)

謎多き鍼灸と言うか人体が謎

鍼灸治療を行うときに体内でどういう変化が起きているのか、どういう仕組みで鍼灸治療が効果を発揮するのかというテーマには未だに謎が多くあります。

そもそも人体が謎だらけですからね。身体の機能も病気の原因も謎だらけ。そこが謎なら鍼灸なんて尚更に謎ですよね。

仮説はいくらでもあります。

しかし全ての状況に当てはまるような断定できるものはまだありません。複雑に絡み合った要素を一つ一つ解きながら研究・検討している段階です。

効くのはたしかに効くけど、、、何故効くのかというのがとてつもなく大きな課題なのです。

鍼灸関連の論文はたくさんありますが、論文のデザインや検討方法や検討内容などについての指摘もよく見ます。

ただ、それは論文自体が良いとか悪いとか言うのとはちょっと違うなと思っています。論文を見る人の視点が違うと言うか、どの立ち位置で論文を検討したり評価したり分析したりするかによっても変わってきます。

私はどの論文も臨床でのヒントを得るために読みますから、全ての論文が素晴らしいと感じます。良い悪いは別として、エビデンスを無視したような論文から大きなヒントを得ることも少なくありません。

鍼灸治療の治効機序

治効機序は、鍼灸治療の効果が出るための仕組みという意味です。鍼灸学校で用いられている教科書には以下のリストのように書かれています。

  • 鎮痛作用
  • 循環促進作用
  • 筋緊張緩和作用
  • 内臓機能の調節
  • 精神機能の調節
  • 内分泌系および生体防御系の調節

次にリストの項目について説明を書き加えます。概ね教科書に準じて書きますが、わかりやすいように少し表現を変えているところもあります。

鎮痛作用

即時的鎮痛を目的とする場合…広汎性侵害抑制調節(DNIC)、脊髄分節性鎮痛、循環促進、筋緊張緩和などの作用が1つあるいは複数が関与している可能性がある。

持続的鎮痛を目的とする場合…下行性痛覚抑制系、ストレス誘発鎮痛、末梢性鎮痛、循環促進、筋緊張緩和などの作用が1つあるいは複数が関与している可能性がある。

広汎性侵害抑制調節(DNIC)、下行性痛覚抑制系、ストレス誘発鎮痛のシステムは、全身性の鎮痛効果が期待できる。

循環促進作用

軸索反射が関与している可能性がある。

筋緊張緩和作用

Ib抑制、相反性Ia抑制、循環促進が関与している可能性がある。

内臓機能の調節

体性 – 内臓反射が関与している可能性がある。

精神機能の調節

鍼鎮痛と関連する部分が多いと考えられている。

内分泌系および生体防御系の調節

交感神経 – 副腎髄質系、下垂体 – 副腎皮質系などが関与している可能性がある。

*上に書いてきたことは、『はりきゅう理論 第3版』(公益社団法人東洋療法学校協会編.2021)を参考にしてまとめたものです。

刺す刺さない問題

鍼は「刺す(打つ)」ことも「刺さない」こともあります。

一般的には「鍼治療は鍼を刺す(打つ)」というイメージがあると思いますが、刺さないことも多々あり、それらを併用する場合もあります。

鍼を刺すことと鍼を触れさせることを簡単には比較できません。それどころか鍼を刺すという点に絞ったとしても簡単には比較できません。

全く異なる理屈で効果を出している可能性がある一方で、同じ仕組みで効果が出ている可能性もあります。その上、鍼灸師も患者も同じ人は存在しない。そのため比較検討が困難であり研究を難しくしています。

難しい問題ではありますが、このあたりのことがいずれ明らかになると思います。

私はただの鍼灸師であり、研究のことについては素人同然です。ただ、鍼灸師は鍼灸師なりに、臨床家は臨床家なりに研究し考えていきたいと思います。

変わること

実際に鍼灸治療をするということにおいて重要なのは、鍼を用いることで身体が良い方向へ変わることです。

なぜ変わるのか、再現性を高める要素は何か、そういうことを突き詰めていくのが研究であり理論ですが、実際に身体が変わり、鍼灸師にも本人にもそれが感じられること、それが大切なことだと思います。

だいたい川崎たまに鳥取。