鍼灸古典『黄帝内経素問』皮部論篇(皮毛)

ここで書かれている内容には古代の中国で使われていた表現が含まれています。見た目の単語が同じでも現代とは意味合いが違うためご注意ください。

陽明之絡

この篇では陽明だけ細かく分析されています。

…陽明之絡也。

其色多則痛多則痺黄赤則熱多則寒五色皆見則寒熱也…

黄帝内経素問.皮部論篇.
  • 青は痛み、黒は痺、黄赤は熱、白は寒。
  • 五色とりどりに出てくるときは寒熱錯綜。

十二絡脈

…凡十二経絡脉者皮之部也。是故百病之始生也必先於皮毛…

黄帝内経素問.皮部論篇.
  • 十二絡脈は皮にある。
  • 百病はまず皮毛から始まる。

ここは黄帝内経を通じて大切にされている考えが書かれています。通じて、と言っても編纂した人が複数いるため微妙なところもありますが。

古典は「全てのことを書いておいてはくれない」んですよ。「式」はなく「答え」だけしか書かれていないこともたくさんあります。

さて、現代で「病気は皮膚から始まる」と言っても「どう言うこと?」となりますよね。ただ、古代では緻密な観察を通して出した一つの答えとして上のように考えていたわけです。

経脈→幹線道路

絡脈→バイパス

経脈と絡脈というものは現代医学で言う何にあたるのか、それを確定することはできていません。数々の論争はあっても、一つの答えを出すには至っていないのです。

皮部論篇の最後

…歧伯曰、皮者脈之部也、邪客於皮則腠理開、開則邪入客於絡脈、絡脈満則注於経脈、経脈満則入舎於府蔵也。故皮者有分部不與而生大病也。

黄帝内経素問.皮部論篇.
  • 皮は絡脈の部。
  • 皮→絡脈→経脈→臓腑、の順に病が進む。
  • 皮のケア、治療を怠ると大病になる。

ここには病の深さについても書かれています。

皮毛から臓腑へ入っていく過程では、絡脈の方が経脈よりも浅いとされています。この「絡脈は浅い」というのは黄帝内経以降はほぼこの考えになっていて、現代中医学でも絡脈の方が浅いとされています。

黄帝内経より前は絡脈の方が深いという考えもあったようですが、どこで逆転したのでしょうか。

外因

現代中医学では病気の原因を3つに分類しています。

外因

内因

不内外因

このうち皮部論篇に書かれているのは「外因」についての記載だと考えられています。

外因だけでを論じていても答えが出ないこともありますし、内因にもつながってくる部分がありますが、一旦は分けて考えておいた方が良いと思います。

個人的には、外→内→外のラインと内→外→内のラインが混ざっているというか、バランスの問題だと考えています。

*外因は、風寒暑湿燥火など天気の影響、細菌やウイルスなどの感染症などの外的な因子のことです。

黄帝内経が全てではない

黄帝内経はバイブル的存在として知られていますが、いくらバイブルでも黄帝内経が全てではありません。

「全てではない」とか書くと、じゃあ結局はどうなんだと言われそうですが。

黄帝内経は「ドーンと完成!一挙公開!!」みたいなものではないらしく、少しずつ完成していって今の形になったとか、誰かが改編や改変をしているとか、いろいろ言われています。

古い文献ですから文字が読み取れないところもあります。そもそも原本が失われており、現存するものは全て写本ですし。

また、黄帝内経より前にも医学的なことが記されたものもあります。だから話がどんどん難しくなるし面白くもなるんですよね。

だいたい川崎たまに鳥取。