鍼灸古典『黄帝内経霊枢』九鍼十二原篇(九鍼)

霊枢の九鍼十二原篇には、九つの鍼が紹介されています。はり師国家試験で必ず勉強するほど(鍼灸師の中では)有名な「九鍼」です。

その中には現在ではほとんど使われなくなったものもありますが、また別の形で新たな鍼が生まれ、各々の鍼灸師によって使い分けられています。鍼と言ってもいろいろなんです。

九つの鍼

霊枢』の「九鍼十二原篇」に九鍼(九つの鍼)について書かれています。鑱鍼、圓鍼、鍉鍼、鋒鍼、鈹鍼、圓利鍼、毫鍼、長鍼、大鍼の九つです。書き出すと下のようなものです。

  • 鑱鍼「…去寫陽氣」
  • 圓鍼「…楷摩分間……寫分氣」
  • 鍉鍼「…按脉…致其氣」
  • 鋒鍼「…發痼疾」
  • 鈹鍼「…取大膿」
  • 圓利鍼「…取暴氣」
  • 毫鍼「…取痛痺」
  • 長鍼「…取遠痺」
  • 大鍼「…寫機関之水」

毫鍼(ごうしん)

一般に「はり」と言えば、ほぼ「毫鍼(ごうしん)」のことを指しています。

毫鍼という言葉は一般的には馴染みのない言葉ですが、例え鍼を見たことがなくても「鍼灸治療のはり」と聞いてイメージするのは毫鍼だと思われます。

ただ、前置きなくいきなり「はり」と聞いて思い浮かぶのは裁縫の縫い針でしょう。鍼灸の鍼を思い浮かべる人は鍼灸師か普段鍼灸治療を受けている人だけです。

最も細い毫鍼は0.1mmですから髪の毛みたいなものです。裁縫の縫い針とは比較にならないほど細い。

ともあれ、最も多く使われてきた毫鍼が鍼の代名詞的存在になっています。いつの時代からそうなったのかは分かりませんが、霊枢の内容から想像しても最近そうなったわけではなく、相当前の時代からそうなっていたようです。

思いを馳せる

鍼灸治療を行うには鍼(はり)艾(もぐさ)が必要です。

仮に鍼と艾が手に入らない世界になったとしたら、他のもので代用することも不可能ではありませんが。。しかし、専用に作られたものとはあまりにも違います。

古代の人がどういう考えや思いで九鍼を定めたのかは分かりませんが、高度な検査機器も先進医療も存在しない時代に、どうにか人の健康を守ろうと考え、一つの答えとして出したのが九鍼なのだと思います。

古代とは異なり、現代では九鍼以外の鍼も存在しますし医療も発達しました。

だから九鍼も必要なくなったのかと言うと、そういうわけでもない。どれほど医療が発達しても、大きく生活が変わっても、体型が多少変わっても、人の身体の仕組みが変わることはないからです。

古代には古代の九鍼があり、現代には現代の九鍼があるのだと思います。古代に思いを馳せつつ、現代に生きる鍼灸師として鍼灸を追求していきたいと思います。

だいたい川崎たまに鳥取。