今回は、私が自分勝手に自分の好みに基づいて吸角をいろいろ試用してみた時の記録です。
私はポンプ抜気式の吸角ばかり使っていますし、今回は全く個人的な好みで判断してますし、メーカー名も出さないので参考にはならないと思います。ご了承ください。
個人的には、特殊な方法をとらない限りそれほど吸角自体に拘らなくても良いと考えています。私は髪際にも使うのでほぼ決まった吸角を使っていますが。今回は面白いから拘っているだけで、、、まぁ、趣味です(笑)
経緯
開業してからずっと同じメーカーの吸角を使ってきたのですが、ここ4年はいろいろな吸角・吸玉を使っていました。
と言っても、被験者は自分・家族・友人、あとは数人の鍼灸学生のかたが協力してくれただけなので検証と言えないくらい規模が小さいものです。
これまで使ってきた吸角に満足していたのに他のものも検証してみようと思ったのは、ナントカ禍で鍼灸師の集まりがほとんど無くなった時期に何かやりたくなったから。そんな大した理由もない動機です。
検証
様々な吸角が販売されていますが、それぞれに一長一短あります。自分で使ってみないとわからない部分があります。おかげで、自分に試しすぎて吸い跡だらけになっていた時期もありましたけどね。
この4年で比較していた内容は下記の通り。
製造…日本製、海外製(主に中国と韓国) 形状…薄いもの・厚いもの、つり鐘型・たこ壺型・お椀型・特殊形状(角型など) 重量…軽いもの・重いもの 材質…ガラス、陶磁器、プラスチック、シリコン 耐久性…高いもの・低いもの 吸着方法…ポンプで陰圧をつくるもの(プラスチック、ガラス)・火で陰圧をつくるもの(ガラス)・本体を変形させて陰圧をつくるもの(ゴム・シリコン) 操作した感覚…素早く操作できるもの・操作に時間が必要なもの、片手で操作できるもの・操作に両手が必要なもの、走罐できるもの・走罐できないもの 受け手の感覚…吸着感が強いもの・吸着感が弱いもの、熱感があるもの・熱感がないもの、ソフトな感じのもの・ガッチリ感じるもの、引き攣れを感じやすいもの・引き攣れを感じにくいもの 施術の影響…跡がつきやすいもの・跡がつきにくいもの、縁の圧迫感が強いもの・縁の圧迫感が弱いもの 衛生処理…洗いやすいもの・洗いにくいもの、オートクレーブ可・不可、ディスポーザブル・リユーザブル 価格…高価・安価*1個当たり
一言に吸角と言っても多くの要素がありますが、比較していたのはあくまで「個人の主観」に基づいています。
例えば、吸角が重い・軽いはグラムを計測したわけではなく「私が使用してどう感じたか」で評価していますし、吸着感が強い・弱いなどは「受けた人がどう感じたか」を聞き取りしたものです。定量で評価するのではなく、主観のままに聞き取りしただけです。
結果
最初は手当たり次第に買っていたので、製品が届き中身をを見た段階でお蔵入りしたり、知人にあげてしまったものもありました。自分のやり方に合わないとか、明らかに使いにくいのが分かるとか、理由はいろいろです。
ネットの画像だけでは細部まではわかりませんからね。
最悪なパターンは(よくある売り方かもしれませんが)、販売ページの画像や説明と実物が異なるパターン。管理者がよく内容を把握していなくて説明文を間違えていることが多い印象ですが、中には分かっててやってるかもと思えるようなこともあります。前者は仕方ないとしても、後者は流石にイラッときます。このあたりがネット購入の限界ですかね。
購入したものが届いて中身を見てみたら、これは仕事には使えないなーということもありました。セルフケアとして一人で使う分には問題ないと思いますが、業務用としては耐久性が、、、というものもありますし。
でも良いんです。そういうこと込みで購入し試してますから。
で、いろいろ検証した結果。
一番最初に使っていたものが一番良かった(笑)
なんだよ、結局それかよ、と思われるかもしれませんが、「慣れ具合」もあるのでそのあたり大目に見てくれるとありがたいです。
「良かった」と言っても、他のものが駄目だということではありません。
いろいろ使ってみるとそれぞれの良さがあり、使い勝手は良いけど耐久性だけが課題だと感じるような良い製品もありました。
今の私の鍼灸治療と一番相性が良い吸角は、、、と考えていくと最初のものが良かったということです。
今はK社とJ社の2社の吸角を使い分けていますが、今後は1社に統一していくと思います。
簡単に特徴を書くと
- ポンプ抜気式
- ガラス製
- たこ壺型
- K社は薄く軽く吸着感が強め
- J社は厚く重く吸着感が弱め
ポンプ抜気式の吸角の中では、この2社のものが洗浄・消毒がしやすく衛生管理が容易だと感じたのも私にとっては大きなメリットでした。
J社の吸角は汎用型と言えるものだと思いますが、K社のものはかなりニッチなところをついているものだと思います。でも、そこが良い(笑)
同じではない
吸角と言ってもそれぞれに特徴があります。材質や形状が異なると、身体に対する影響も変わってきます。目的によっても使うものが変わってきます。
私が行う吸角施術は「吸角は少数・短時間で鍼灸併用」が基本ですから、そのスタイルに合わせて吸角も選んでいます。今回検証する中で自分の求めるものがより明確になりました。
【私が吸角に求めるもの】 ・透明度が高く耐久性があるガラス製 ・比較的薄め ・たこ壺型 ・軽いもの ・大きくなくて良い(内径10〜50mm) ・どこでも吸着させやすい ・ポンプ抜気式 ・ポンプの着脱が容易
上に書いたのはあくまで私の“好み”です。
吸着感や引き攣れ感などは受ける人の状態によって変わってきますので、その部分を吸角に求めてはいません。
【標準的な使用感】 ・背中など広い面に用いるなら吸角が多少重たい方が「やった感」がある。 ・たくさん使うなら火罐が圧倒的に早いが、吸着圧を微調整したい場合はポンプ抜気式が良い。 ・吸角を並べて密に吸着させたいならつり鐘型が良い。1点の吸着圧を強めたいならたこ壺型が良い。 ・つり鐘肩よりたこ壺型のほうが吸着感が強い。好みで使い分けられる。 ・吸角の縁が細い方が吸着感や引き攣れ感が強い傾向があるが、実際に皮膚がどのくらい引っ張られているかは内部を測定できないのでわからない。 ・髪際に用いるなら薄い方が良いが、走罐法には厚いものの方が良い。 ・髪際は持続吸引しないと陰圧を維持しにくいためポンプ抜気式が良い。 ・凹凸やカーブが強い部位にはシリコンなど柔軟性があるものが吸着しやすいが、吸着圧はあまり強くない。 ・ガラスは洗浄や消毒がやりやすいが、落とすと割れる可能性がある。落としても火罐式の吸角は滅多に割れない。 ・プラスチックは洗浄や消毒がやりにくいが割れる心配がない。 ・抜気式のガラス吸角は高価、プラスチック製は安価。
ダラダラ書きましたが、全て目的しだいですね。
少しだけ公開
今回はじっくり検証したので、しばらく再検証はしないと思います。よほど心に響く新製品が出ない限り。とか言ってすぐ買うんですよね(笑)
社名を出してしまうといろいろまずいので、社名は伏せて検証結果を少しだけ公開しておきます。また、製造国も非公開とします。日本国内で生産しているガラス吸角メーカーは限りなく少ないので、文字だけの特徴でも見る人が見ればわかってしまいますから。
[1]ガラス製。ポンプ吸引式。たこ壺型。ポンプ吸引式としてはガラス厚め。製品のばらつきほぼ無し。吸着感強くない。圧迫感普通。ポンプ接続に多少時間を要す。見た目は良いが何故か吸着が弱い。
[2]ガラス製。ポンプ吸引式。つり鐘型。ガラス薄め。製品のばらつきあり(吸引弁部分)。吸着感弱め。圧迫感弱め。ポンプ接続容易。本体は均一だが弁に難あり。抜気式ガラス吸角の割に安価。
[3]ガラス製。ポンプ吸引式。たこ壺型。ガラス薄め。製品のばらつきあり(ガラス部分)。吸着感強め。吸着感が強い割に圧迫感弱め。ポンプ接続容易。丁寧な作りではないがある意味で良いかも。弁の操作に多少の慣れが必要。
[4]ガラス製。ポンプ吸引式。たこ壺型。ポンプ吸引式としてはガラス厚め。製品にばらつきなし。吸着感弱め。圧迫感強め。ポンプ接続に多少時間を要す。サイズの幅が大きく中間が欲しい。弁の操作に多少の慣れが必要。
[5]ガラス製。ポンプ吸引式。たこ壺型。ポンプ吸引式としてはガラス厚め。製品にばらつきなし。吸着感弱め。圧迫感強め。ポンプ接続に多少時間を要す。完成度が高いぶん価格もそれなり。
[6]プラスチック製。ポンプ吸引式。つり鐘型。製品にばらつきあり(吸引弁部分)。吸着感弱め。圧迫感弱め。ポンプ接続容易。縁の形状が独特で広いため狭い場所にはつけにくい。弁の不調多し。
[7]プラスチック製。ポンプ吸引式。たこ壺型。製品にばらつきなし。吸着感強め。圧迫感強め。ポンプ接続に多少時間を要す。
[8]プラスチック製。ポンプ吸引式。たこ壺型。製品にばらつきあり(吸引弁部分)。吸着感強め。圧迫感弱め。ポンプ接続容易。吸引弁壊れやすい。
[9]プラスチック製。ポンプ吸引式。つり鐘型。製品にばらつきあり(吸引弁部分)。吸着感強め。圧迫感弱め。ポンプ接続容易。ポンプが華奢で操作が不安。
[10]プラスチック製。ポンプ吸引式。たこ壺型。製品にばらつきなし。吸着感強め。圧迫感強め。ポンプ接続容易。ポンプが壊れやすい。
[11]プラスチック製。ポンプ吸引式。つり鐘型。製品にばらつきなし。吸着感強め。圧迫感やや強め。ポンプ接続容易。
[12]プラスチック製。ポンプ吸引式。つり鐘型。製品にばらつきなし。吸着感弱め。圧迫感弱め。ポンプ接続に多少時間を要す。耐熱プラスチック使用。
[13]プラスチック製。ポンプ吸引式。つり鐘型。製品にばらつきあり(縁に段差あり)。吸着感普通。圧迫感普通。ポンプ接続容易。縁にバリがあることあり。
[14]プラスチック製。ポンプ吸引式。特殊型。製品にばらつきあり(全体に雑な作り)。吸着感よくわからない。圧迫感局所的に強く感じる。ポンプ接続容易。特殊な形だからか、吸着や圧迫の感覚が変わっている。
[15]プラスチック製。ポンプ吸引式。特殊な。使用感は[14]と同じ。
[16]プラスチック製。ポンプ吸引式。たこ壺型。製品にばらつきなし。たこ壺型の割に吸着感弱い。圧迫し弱い。ポンプ接続に多少時間を要す。
[17]シリコン製。自着式。製品にばらつきなし。吸着感弱め。圧迫感弱め。
[18]シリコン製。自着式。製品にばらつきなし。シリコンタイプとしては吸着感強め。圧迫感弱め。洗浄が難しい構造。
[19]シリコン製。自着式。製品にばらつきなし。シリコンタイプとしては吸着感少し強め。圧迫感弱め。
[20]シリコン製。自着式。吸角の縁がいびつなものがあり吸着が弱い。
[21]プラスチック製。ゴム球付き自着式。製品にばらつきなし。吸着感弱め。圧迫感弱め。
[22]ガラス製。ゴム球付き自着式。製品にばらつきあり(ゴム球の弾力に差がある)。吸着感弱め。圧迫感弱め。
[23]ガラス製。火罐式。製品にばらつきあり(縁の形状)。火罐式にしては薄い。縁が丸いタイプ。
[24]ガラス製。火罐式。製品にばらつきあり(縁の形状)。縁が角ばっているタイプ。走罐すると強刺激。
[25]ガラス製。火罐式。製品にばらつきほぼなし。縁が多少丸くなっているタイプ。
[26]陶磁器製。火罐式。製品にばらつきほぼなし。若干縁の個体差あり。縁が丸いタイプ。予想していたより軽い。内部が見えないのが不安。
[27]プラスチック製。電動吸引器付き。吸引器があまり調子が良くないと感じたが、もともとなのか個体差なのか不明。
[28]プラスチック製。電動吸引器付き。吸引力が低いため吸引速度も遅い。吸角自体は問題ないが、使いにくい。
今回、火罐と自着式の吸角は少ししか試用しませんでした。火罐式の吸角は髪際に使えないので私のスタイルには不向きですし、自着式はシリコン製やゴム製のため耐久性が高くなく私は採用していません。
電動吸引器付きの吸角は数種類ありますが、低価格のものはやはりそれなりでした。発想は面白いと感じるものもありましたが、吸引力が弱く吸引スピードも遅いので業務用としては使いにくいですね。
検証してみて
私が吸角を用いる場合、吸引弁の構造が使い勝手を大きく左右します。閃罐法や走罐法を多様する鍼灸師なら持ちやすさや皮膚への負担を考える上で本体形状が重要だと思いますが。
弁に耐久性がないと弁だけすぐ壊れてしまいますし、汚れやすい構造だと洗浄や消毒の手間がかかります。ポンプの着脱に時間がかかるとスムーズな施術がしにくくなります。
そのあたりが自分の好みやスタイルに合うものとなると意外と少なかったです。けっこう沢山買ってみたんですけどね。
その物が何であれ、本当に気に入る製品というのは滅多に巡り会えません。鍼にしても艾にしても吸角にしても、末長くお付き合いさせていただきたいと願っています。