『針灸資生経』を読んだ時のメモ。
メモを改めて見ると何故気になったのかわからないところもあるが、一応そのまま書くことにした。漢字を調べるつもりだったのかも。ちなみに私が漢字を調べるために普段使っているのは『漢字源』と『漢辞海』の2冊。
注:[]は、原文では小文字で書かれている注記部分。
上星
…在鼻直上入髪際一寸陥中[明堂云容豆是]…
…以細三稜鍼刺之即宜洩諸陽熱気無令上衝頭目…
まぁそういう作用になるよねという場所。鍼は種類とサイズの使い分け。あえて使い分けないという考えもあるけど。このあたり性格出るよね。
顖会
…年踰壮則脳冷…
…凡脳冷者宜灸此…
こういう表現が古典にはよくある。
脳や頭が冷える感じがするという訴えはたまにある。後頭部が、、、額が、、、天辺が、、、場所もいろいろある。統計をとっていないのでただの印象だが、訴えがあるのは更年期に相当する時期かその少し上くらいの時期に多いような気がする。高齢者からはあまり聞かない気がするがどうだろうか。身体のギャップの問題だろうか。
百会
…旋毛中可容豆…
…唐秦鳴鶴刺微出血頭痛立愈…
豆って言うのがいかにも中国古典という感じ。
風府
…凡怯弱者須護項後可也…
日本の時代劇でもたまに出てくる後頭部にそびえ立つ三角、そういう意味があったのか?調べてないからわからんが。現代のパーカーのフードもかぶることはほぼないかもしれないが、あるのと無いのではかなり体感温度違う。消滅しない服。これも自然の理か。
率谷
…明下云嚼而取之…
口を開け閉めして筋肉を動かして取穴するとある。こういった取穴方法は昔の本には多いが今はあまり聞かない。何故だろう。こっちの方が孔穴っぽいし圧倒的に実践的だと思うけど。もったいない。
瘈脈
…鶏足青絡脈刺出血如豆汁不宜出血多…
また豆。やっぱり古代は豆。鶏の足も多い。ところ変われば例えも変わる。
承漿
…若一向灸恐足陽明脈断令風不差停息復灸令血脈通宣其風立愈…
灸を続けて治らないときは、一回灸を休んでから再開すると血脈が通じてすぐに治ると言う。私は承漿に透熱灸をやったことは無い。数人に知熱灸をやったことがあるが煙の処理がちょっと面倒。今ならみんなが手で持ってるファンで吸い取れば煙対策が楽かも。
灸でも鍼でもちょっと間をおくと良いっていう時はある。仕切り直しってやつ。これが自分でもびっくりするくらい効いたりする。
攅竹
…鍼一分留三呼瀉三呼徐徐出鍼宜以細三稜鍼刺之宣洩熱気三度刺目大明…
…明云宜細三稜鍼鍼三分出血…
三度か。このあたりの表現は本音なのか、だいたいそんなもんだ的な定番としてなのか。
地倉
…有脈微微動是也…
学生の頃は地倉に鍼を打つことはほとんど無いだろうと思っていた。でも鍼灸師になってみると割とある。美容鍼的な鍼灸をやっていない私でも。パーキンソン病、顔面神経麻痺、帯状疱疹、口唇ヘルペス、嗅覚や味覚の障害などは鍼灸院では割とメジャー。
上関
…必須側臥張口取之…
下関
…側臥閉口取穴…
上関下関ともに側臥位で、上関は口を開けて鍼をし、下関は口を閉じて鍼をするという指示。鉄鍼ならともかく、現代で普通に使う素材の毫鍼ではあまり気にする必要はないと思う。が、深刺は要注意であることに変わりはない。普通に丸みの鍼尖が手に入るのは有り難い。
脊中
…灸令人腰背傴僂…
んー、傴僂(せむし)。理由を考えてみたが横隔膜、大腰筋、腹斜筋あたりか。ただ、傴僂云々を除いても重要な場所。
命門
…伏而取之[明作俛而取之]…
伏臥位で取るか前屈みで取るか問題。注では明堂では前屈みで取れとしていると書いてある。私は座位での前屈み派。伏臥位なら仙骨を挙げて。
風門
…一名熱府…
…若頻刺洩諸陽熱気背永不発癰疽…
熱の府。この辺りは確かに出る。
膏肓兪
…主無所不療…
…令人正座曲脊伸両手以臂得動揺。従胛骨上角模索至骨下頭。其間當有四肋三間灸中間。従胛骨之裏去胛骨容側指許。摩胠去表肋間空處。按之自覺牽引於肩中…
…如病人已困不能正坐當令側卧挽上臂令取穴…
…又以右手従左肩上住指頭所不及者是穴也。右取亦然…
…若不能久坐當伸両臂令人挽両胛骨使相離。不爾即胛骨覆其穴灸之無験…
…令病人両手交在両膊上灸時亦然胛骨遂開其穴立見。以手指摸索第四椎下両旁各三寸四肋三間之中間按之酸疼是穴…
…立㸃立灸坐㸃坐灸卧㸃卧灸云…
超重要な孔穴として膏肓兪を挙げている。古代あるあるだけど、治らない病は無いとまで書いている。効かない病はないというくらいかな。そして、各種取穴法を述べ、最後に自分の取穴法を書いている。灸点をおろした姿勢で施灸するとか取穴した姿勢で鍼をするというのは現代でも基本。
天牖
…若灸面腫眼合先取譩譆後鍼天牖風池即差若不先鍼譩譆即難療…
天牖をいじりすぎればそうなるだろうが、返しがまず譩譆なのは何故なんだろう。どの順で開くのかな。
石門
…在臍下二寸…
…明堂載甲乙経云一名丹田千金素問注亦謂丹田…
…丹田乃在臍下三寸…
関元
…在臍下三寸…
…関元乃丹田也…
…若要安丹田三里不曾乾…
四満
…[尤証得丹田在二寸]…
孔穴相去(骨度、ツボとツボの距離を述べている)
…三寸為丹田…
石門と関元についての記載。ある意味で永遠のテーマである丹田どこですか問題。王執中は、ほとんどの医学書は石門が丹田と言っているが本当は関元が丹田だという主張。『難経疏証』の記述をその根拠とし、強めに断定している感がある。さらに孔穴相去の項でも臍下三寸だと述べている。
だが、その一方で四満穴(臍下二寸の横並びにある)についての記載の箇所では、小文字で書かれた注に「丹田が在二寸であることは証明されている」と書いてある。注だけど。
今は限定的にしか使っていないが、自分が20代の頃は橋本先生の操体法ばかりやっていた時期があった。操体をやっていると常に相手の丹田を意識する。普通は重心が上がっているから下に合わすようにしていた。圧迫骨折とかはどんどん上がってしまうから。
前関
…前関穴一名太陽穴…
…理風赤眼頭痛目眩渋等疾所不可廃…
前関より太陽の方が聞き慣れていると思う。たぶん今も学校の教科書には奇穴の太陽穴として書かれている。
ここでも明確な効果があるが捨てられない穴として紹介されている。私も鍼灸師になってから治療中に一度も太陽穴に触れなかったことは数えるほどしか無いと思う。私にとってはそれくらい重要で必ず確認する孔穴。
頬車
…在耳下曲頬端陥中…
…明下云在耳下二韮葉陥中…又云耳下曲頬骨後…
…千云一名機関在耳下八分小近前…
豆や鶏足と同じく韮の葉も好きなのだ、例え話は。頬の端(咬筋中)の陥凹に取るか、耳から韮の葉2枚分下にとるか、耳下で下顎角の後ろにとるか。教科書的には咬筋中に取るが、どれも良い。自分的には下顎角の下もなかなか良い。
譩譆
…以手痛按之病者言譩譆…
たしかに薄いからこたえるところではあるし、更に外に取れば気持ちは分かる気がする。実際「譩譆」と聞いたことはないけど。
膻中
…膻中者乃十二蔵之一…
気海
…今人既不能不以元気佐喜怒矣…
昔と違って今の人は元気を消耗するから喜怒で補うしかない、みたいな意味だろうか。こういう風に今の人は疲れるとかストレスがかかっているという表現は黄帝内経の時代から繰り返し使われている。現代は大変だ。
少商
…去爪甲角如韮葉[明云白肉際宛宛中]…
…以三稜鍼刺之微出血洩諸蔵熱湊…
…以三稜鍼刺之令血出勝気鍼…
個人的に『明堂』が言う“宛宛中”の方が宛陳が顕著なほど明瞭になるので実用的だと思う。三稜鍼が毫鍼より良い時は熱を瀉すのは“忽顋頷腫大如升喉中閉塞水粒不下”の時と言う。
魚際
…散脈中…
太淵
…銅人曰太淵明堂曰太泉…千金方注云太泉即太淵也避唐祖名改之…
こう言うことがあるんだよねー。唐を建国した「李淵」と淵の字が被るから淵を泉に改めて太泉としたと。
少海
…治歯寒脳風頭痛…
歯寒は時折聞く症状。今では何らかの病名がついていたりすることが多いが、こう言う直接的な表現の方が分かりやすくて良いと思うことがある。疾患名にとらわれると鍼灸の場合はうまくいかないことがあるから。
風市
…療冷痺脚脛麻腿膝酸痛腰重起坐難[明下]…
…痺偶繆刺以温鍼遂愈…
…不特治冷痺亦治風之要穴[見明堂]…
この辺りは男女ともに冷感が出やすくよく絡も出る。鍼灸も様々なアプローチが行われる場所。温鍼ははたして火鍼なのか、湯などで加熱した鍼なのか、艾を併用する鍼か。現代最も使われているステンレス鍼ならほとんど熱を伝えない。だが、銀や銅なら鉄と比べて10倍程度、ステンレスと比べると10〜20倍は熱伝導率が高い。いろいろ考えてしまう。
三里
…秦承祖云諸病皆治食気水気蠱毒痃癖四肢腫満膝䯒痠痛目不明…
…華佗云療五労羸痩七傷虚乏胸中瘀血乳癰…
…下気…
…明云鍼腹背毎須取三里穴…
伏兎
…明云婦人八部諸病通…
八とつくと八瘕かと思ったが、八部はどうもそういう区分けではないような感じがする。わからん。八瘕→黄瘕(おうか)、青瘕(せいか)、躁瘕(そうか)、血瘕(けっか)、脂瘕(しか)、孤瘕(こか)、蛇瘕(じゃか)、鼈瘕(べっか)
然谷
…不宜見血…
…素注刺三分刺此多見血令人立飢飲食…
照海
…千云内踝下容爪甲…
千金での記載のようだが、あえて爪というのは単純に小さいということではなく細いということ。これは対の申脈も同様。照海も申脈と細い箇所は上下にあるが境界を考えれば下が妥当なのだろう。
委中
…委中者血郄也熱病汗不出足熱厥逆満膝不得曲伸取其経血立愈…
よく言われるところ。
阿是穴
…有阿是之法言人有病即令捏其上若裏当其処不問孔穴即得便快成痛処即云阿是灸刺皆験故曰阿是穴…
阿是穴についての説明。よく言われるやつ。